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NATOがドイツUボートをウクライナへ提供できない4つの理由とは?

ウクライナ前外相メルヌークはNATOUボートの提供を要求する。だがNATO側はこれを拒否する。その理由とは?

西側がウクライナへの主力戦車提供を公言すると、すぐさま今度は戦闘機の提供が要求された。そして今はウクライナからUボートを要求する声が上がっている。当然ドイツも矢面に立つこととなる。

ウクライナ前外相メルヌークはTwitterでドイツUボートについて言及する。ティッセンクルップは、クラス 212A の例である、世界最高水準の潜水艦の 1 つを建造している。目的は:ロシア黒海艦隊をウクライナ沿岸から駆逐する。しかしNATO側はUボートの提供を拒否する。その理由とは?

ロシアの制水中権

ロシアのウクライナ侵攻以降、戦艦が大きな役割をになっている。黒海艦隊を主力とするロシア戦艦大隊はセバストポリ黒海の重要箇所の制海権を握っている。これによりロシア艦隊は敵Uボートから十分な距離を保ったままウクライナ領内に向けて巡航ミサイルを打ち込むことが可能となっている。

現状ウクライナ海軍には黒海に駐留するロシア艦隊を駆逐する術がない。ウクライナ軍が使用できるのは小型ボートのみである。仮にウクライナ軍が黒海艦隊の旗艦を沈めたとしても状況は変わらないであろう。

ドイツUボートのみでは不十分?

Uボートの提供はウクライナ側に好機をもたらすであろう。Uボートの専門家ヨハンネス・ペーターズは”Spiegel”に、ウクライナUボートがロシア軍を弱体化させることが可能である、と説明する。「ロシア軍は常にウクライナUボートからの攻撃に神経を使わなければならなくなります。」。

もちろん問題点もある。一つ目は:制海権を奪取するのにUボートでは不十分であるとのこと。

Uボートの船員訓練には1年を要する

そしてドイツUボート212Aには更なる問題点が存在する。この日原子力潜水艦は現代的で世界で最も静かである。特にこのドイツ製が優れている点:ドイツ連邦軍が公開しているように、非常に小型で、機動性が高い点である。2週間に渡り艦内への酸素補充を必要としないのは世界でドイツ製Uボートだけである。

これが2つ目の問題も引き起こす:

だがこのドイツ製Uボートはその高い性能から運用が容易ではない。ウクライナ兵が訓練を終え実戦に出れるまで最低でも1年を要するとされる、とペータースは述べた。必要な技能は戦車よりも複雑で、212A型に精通している教官は28人しか存在しない。このことからドイツによる養成は困難であると、キール大学の海軍専門家セバスチャン・ブルンスは答えた。

エルドワン大統領とNATOの弱点

3つ目の問題点:

そもそも黒海にてウクライナ海軍にUボートを引き渡すことが困難である。これにはトルコ大統領エルドワンが海峡を解放しなければならないが、このおかげでロシア艦隊は黒海に集結することが可能となっていた。

次に重要となるのが:

NATOウクライナUボートを提供することで、自らを弱体化させることとなる。6つの212A型Uボートは安全保障上不可欠なものである。緊急時にはバルト海にて索敵の役割を担うこともある。これらが抜けてしまうことは結果的にNATO自身の対ロシア防衛力を弱めてしまうことになるだろう。

ブルンスもまたドイツUボート提供の可能性を否定する。「ドイツUボートやドイツの戦艦が黒海を航行するなんて非現実的です。」。海軍専門家はウクライナへ小型戦艦を提供することを推奨する。この方が結果的に迅速にウクライナを支援することにつながるとのことである。

 

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