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「我々は対露戦争を戦います。」:ベアボックによるロシアへの宣戦布告?!

木曜日に行われた戦車提供議論の中で連邦外務大臣アンネラ・ベアボックが放ったある発言が物議を醸している。「我々は対露戦争を戦います。」。この発言は早速ロシアのテレビ番組で取り上げられることとなる。

シュトラースブアクで開催された欧州議会にてベアボックは自らの発言を以てして対ロシアへの団結を促した。そしてその発言はすぐさまTwitterにて論争を巻き起こす。結局のところ西側にとって再認識すべき点、それは当戦争はウクライナとロシアの二国間戦争であり西側は一国たりとも参戦していないという事実である。

「女リッベンドロップが我々に勇ましく宣戦布告なされた」

ロシアのプロパガンダがこれを取り上げるまでに時間はかからなかった。ショルツのレオパルド2戦車提供の発表憤慨したプーチン専属の宣伝者ヴラジミール・ソロブジョフは水曜日連邦外務大臣に口撃を仕掛ける。「あなたは対露戦争に参戦しました。」、とソロブジョフはテレビ番組で発言した。そして続けて:「この第4帝国の外相は我がロシアに対し宣戦布告と受け取れる実に勇ましい演説を送ってくださいました。」。当テレビ番組はロシアのウクライナ侵攻以降重要な宣伝機関としての役割をになっている。

ソロブジョフはさらに続ける。:「彼女には権力がない、彼女はただの1人の女性だなんて言わせません。そう、いうまでもなく彼女は第四帝国の栄えある外務大臣!この女リッペンドロップは我々に対し勇ましく宣戦布告されました。」。言わずもがリッペンドロップとはかのナチス第三帝国外相であり、1941年にモスクワに対し宣戦布告を送った。なおベアボックの発言に対しプーチンからのシグナルは現在確認されていない。

発言の一部のみを切り取る?

連邦外相ベアボックは欧州議会にてウクライナ支援への団結を求めていた。「重要なのは、我々が一丸となり、欧州が分裂することはあってはならないということです。」。我々の団結がウクライナに自由と平和をもたらすことになると主張する。

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連立与党内からの批判に動じないショルツ:歴史的決断の背景には

大きな決断を行ったショルツは次に連立与党内の統制に動く。「今日という日は、各々が近い未来自らの発言について考える機会を与えることになるでしょう。」、とショルツは水曜日ZDFに述べた。

ここ数日間に渡りマリエ・アグネス(FDP)、シュトラック・ツィマーマン(FDP)、そしてアントン・ホフライター(緑の党)は決断できないショルツを痛烈に批判していた。連邦議会防衛委員会の委員長でもあるツィマーマンは彼の会話能力の崩壊ぶりを揶揄していた。SPD会派長ロルフ・ミュッツェニヒはツィマーマンをまるで喘いでいるようだと皮肉を込めて反撃した。「ツィマーマンとその愉快な仲間たちはなんとしてでも我々を”独ソ戦”へと導こうとしました。」。

常に冷静だったショルツ

ショルツはミュッツェニヒの発言に言及する。「彼は非常に賢く、冷静に状況を捉えていた。」、とショルツは評価する。外交は決して一時の感情に流されてはいけない、とショルツは強調した。

戦車論争に関して連邦議会内で意見の相違はない、とショルツは強調した。「この議題において我々政府は完全に皆同じ方向を向いています。これは財務大臣クリスティアン・リンドナー(FDP)、経済大臣ロバート・ハベック(緑の党)に関してももちろん同じです。」。

 

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一斉投入される欧州中のレオパルド戦車:ショルツの号令

これまでドイツは祖国防衛を行うウクライナに対しある程度の武器を提供してきた。だがそこに戦局に多大な影響を与えうる戦車は含まれていなかったが。だが状況は変わった。

ショルツの号令により欧州中のレオパルド戦車が一斉に投入される。

実に長期にわたる検討であった。ドイツはレオパルド戦車のウクライナ戦線への投入および欧州他国に待機している同戦車の投入を許可を発令したとの情報を、ドイツ報道機関が火曜日ベルリン開催の連立政権の会合で手に入れた。”Spiegel”筋によると、連邦軍部は保管中のレオパルド2A6を戦線へ投入することとなっている。またこれに伴い14の最新鋭装備一式も必要となる。

ウクライナへ提供することとなっているレオパルド2戦車を全て正式にその許可を決定するために、ショルツは奔走することとなる。また”Spiegel”筋によるとショルツは欧州各国、ポーランドなどへのレオパルド戦車提供を許可する意向である。北欧諸国も戦車提供の意志があるとのことである。

欧州内計13カ国がレオパルド2戦車を保有している。これら諸国の多くがレオパルド戦車投入の準備を整えている。

 

欧州諸国の戦車保有状況

デンマーク:戦車の正確な数は、国防省、コマンド、および購入担当の管理当局によって秘匿となっている。だが少なくとも14両の提供は明らかになっている。

フィンランド:当国防省によると、およそ200両のレオパルド戦車を所有しており、早期から提供の意思を見せていた。

ギリシャ:その保有数は当該諸国のなかで飛び抜けている。レオパルド2戦車300両、レオパルド1戦車500両である。だが対トルコ防衛の観点から提供に関しては前向きではない。

オランダ:レオパルド2A6戦車を18両保有

ノルウェー:詳細は不明。当防衛省によると、2001年に52両のレオパルド戦車を売却していた。

ポーランド:当防衛省によると、247両のレオパルド戦車、2A4型そして2A5型、その他最新式を含む。ルダ大統領は、このうち14両をウクライナへ提供することを発表している。

スウェーデン:詳細情報は不明。だが100両以上のレオパルド戦車を保有していることが確実となっている。

スロバキア:現時点ではレオパルド戦車1両のみ。だが2023年末にはその数15両まで登るとされているが、提供の意思はない。

スペイン:347両のレオパルド戦車を保有。そのうち108両が旧式の2A4、239両が最新の2A6である。だが稼働可能数は多くない。スペイン防衛大臣は8月の時点で提供の意思がないことを明言している。

チェコ:ドイツから提供された14両のレオパルド2A4戦車とバッファロー装甲車両を所有。これらはウクライナへ転送されたソビエト型戦車の代替である。

トルコ:当防衛省からの詳細発表は行われていない。だが国際軍事力調査機関によると、316両のレオパルド2A4、170両のレオパルド1A4そして227両のレオパルド1A3の所有が公開されている。

ハンガリー:報道機関の発表によると、2020年に訓練用にレオパルド2A4をレンタルしていた。そして同年、新たに44両のレオパルド2A7を手に入れている。これらのウクライナへの提供は、現大統領オワバーンとロシア大統領プーチンの親密な関係を考慮すると可能性は極めて低いと考えられる。

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ショルツ首相への支持率その数わずか4分の1?:あの日本の岸田を下回る低支持率

2022年5月時点でショルツへの支持率はすでに低迷していた。そしてウクライナへの戦車論争への彼の結論がさらに国民及びその支持を遠ざけることとなる。

連邦首相の私有財産を公開した”Stern”によって行われた直近の世論調査がショルツへの求心力の低下を明らかにする。数値にしてわずか25%であるが、これは危険水準と揶揄されている日本の岸田首相の28%を下回る。

半分以上の国民がショルツを無能とみなす

国民の46%がショルツを首相としての能力を有していると判断する(15%の下落)。信頼度も41%へと下降している。その他の項目についてもすべて50%を下回ることとなった。彼に好感を抱いているものはわずか43%にとどまった。そしておよそ3分の1の国民が、ショルツ首相は人心掌握に長けているとの見解を述べる。

 

※これら調査はRTL Group ドイツの世論調査機関が2022年1月19日から1月20日にかけて行なったものである。

 

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ショルツがレオパルド戦車の提供を頑なに拒む真の理由とは:そこには軍事大国アメリカの影響が?

戦車論争は軍事戦略的観点から行われる一方で、ショルツの残念な決断がアメリカとの政治的関係に大きな影響を与えうる。ショルツの真の思惑とは一体何なのか?

論争の渦中にいる連立政権そして外国からの批判:ドイツの戦車提供拒否の影響は国内にとどまらない。祖国防衛のために一刻も早く主力戦車を必要とするウクライナに対し、ショルツは頑なに手を差し伸べることを躊躇する。

当然のことながらドイツは他国へも主力戦車の無償提供は行なっていない。現時点においてEUNATO傘下の16カ国にこのレオパルド戦車が配置されていて、各所有国は一刻も早いウクライナへの提供を望んでいる。

戦車論争は軍事戦略的観点から行われる一方で、ショルツの残念な決断がアメリカとの政治的関係に大きな影響を与えうる。

いずれの場合にも正当な理由がある

ショルツの対応が世界中を賑わせている。「提供するもしないもそれぞれに足りうる正当な理由があります。これらは互いに天秤にかけられなければなりません。」、とラムシュタインの会合にて連邦防衛大臣ピストリウスは述べた。

提供する理由は明確である:当然戦車無しではウクライナは防衛線を維持できない。では拒否に足る理由とは?常に論点となってきたのが、いわゆるプーチンの地雷のデッドラインを超えられるのか、そして戦争に加わる覚悟はあるのか。もちろんこれだけが戦車提供拒否の理由ではないだろうが。ただショルツは他国に対してもレオパルド2戦車の無償提供を行なったことはない。

アメリカにとっては千載一遇の機会?

これまで議論されてこなかった理由は、およそアメリカとの国益関係が絡んでいるとされる。ノイエ・チュアリッヒャー新聞によると、アメリカは欧州各国がレオパルド戦車を提供しそして自らもそれに続く形で戦車を供給するといった台本を描いているとのことである。アメリカにとっては欧州に戦車を売り下す千載一遇の機会となり得るのである。

とりわけアメリカの兵器製造の競合国となっているのはドイツであるが:レオパルド2戦車はその性能、完成度の高さから第二次世界大戦末期に製造された”ティーガー”同様その量産が困難である。

巨大な軍事的影響を世界にもたらすアメリ

早くも 1960 年代に、アメリカ人は「国防安全保障協力庁」を設立し、アメリカの武器を購入するよう各国に働きかけてきた。アメリカが提供した武器を所有する軍事同盟国は米国主導で動かすことが容易になる。欧州諸国がアメリカから武器を購入する場合、供給量を増やし、価格を下げることができる。これら収入がアメリカに富をもたらし、さらなる最新鋭兵器の開発を可能とする。

板挟みにあるショルツ

これら軍備政策の利益がショルツの決断に影響を与える。レオパルド2戦車を提供した場合、ショルツは国益を毀損することになる。もし提供しなければ、世界中から批判を浴び、ここでも何らかの形で国益を損ねるであろう。

世界各国が米国と戦車協定を締結することはドイツの兵器産業の損失の繋がり、ベルリンの政治的影響力も低下させうる。首相にとって重要なものとは何か。

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投入可能戦車の一覧表が存在していた?:ドイツ防衛省による水面下での計画

連邦防衛大臣により作成された戦車一覧が長期に渡り存在していたことが”Spiegel”筋により明らかになった。ここにはウクライナへの提供可能なレオパルド型戦車の一覧が詳細に記載されていた。

連邦防衛大臣ピストリウスは金曜日に開催されたラムシュタインでのウクライナ戦争に関する会合にて、現在稼働可能なレオパルド型戦車の数を把握する旨を伝えた。”Spiegel”筋によると、この戦車一覧表は長期に渡り存在していたとのこと。2022年の夏以降詳細が連邦防衛省へと送られていた。これには稼働可能数及びウクライナへの提供可能数が記載されていた。

公開された一覧表:出動可能数は212両

連邦軍は312両以上のレオパルド2型戦車が稼働可能であると判断している。うち99両が前年5月の時点で修理中であった。これにより、212両の戦車2A5、2A6,、2A7、2A7Vが出動待機中であり、後者は最新鋭型である。

19両の主力戦車が試験運転の後ウクライナへの投入が可能となっている

”Spiegel”筋では連邦防衛軍からは19両のレオパルド型2A5がウクライナ戦線へ投入可能となっている。現在これら戦車は部隊の戦闘演習に参加しており、ここでは敵戦車との戦闘を想定したシミュレーションが行われている。これら戦車隊は第一に訓練が目的であり、戦闘にて当部隊には加わらないこととなっている。

これらの陰でポーランドがドイツの司令無しでウクライナ戦線へ主力戦車を投入することを発表した。ポーランドが所有しているのは旧式の2A4であるが、2A5へと改良が可能で、戦車大隊を編成、ウクライナ戦線へと投入されることとなる。その数44両である。

圧力を受けるピストリウス

この埋め尽くされた一覧が新連邦防衛大臣に圧力をかける。ピストリウスは他の国々と共同で提供することを検討すると発表したが、これはすでに水面下で進んでいるとみられる。

レオパルド型戦車は1979年から生産が開始され、これまでに製造された数は3600両にのぼる。そのうち良質で出動可能なものが連邦軍傘下に属し、他は秘密裏に保管されている。

 

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プーチンにとどめを刺すことを躊躇するショルツ:戦車提供を断念

ラムシュタイン米軍基地での会合で期待される決断は幻となった。ウクライナの希望の光が絶たれた。救世主はやってこない。非常に残念な結果となってしまったのか。

ラムシュタイン米軍基地でのNATO防衛会合は何の成果も上がらずに幕を閉じた。ショルツはウクライナにとって救いの手となる主力戦車供給を相変わらず差し伸べずにいる。米国もエイブラムスの供給を断念した。一体この会合は何だったのか?

少なくとも団結に不足は見られなかったはずだが。「これほどまでに世界が一致団結したのをみたことはない。」、と米軍参謀総長マーク・ミリーは述べた。数十億ドルもの支援金が投入されることとなった。これはいわばプーチンへの降伏勧告である。

 

 

心強い支援、だが十分ではない?

米国単独のみで防空システムを伴いおよそ250億ドル、そのほかブラッドリー型戦車59両、アベンジャー型防空システム、1000もの銃器類。ドイツが提供するのは、40両の装甲輸送車、7つのガーパード型防空システム、そしてパトリオット型防空システムと弾薬類。物資類は10億ユーロに上る。

そしてNATOは民主主義陣営の団結を示す。英国とフランスは支援を発表したが、最新型の戦車供給が含まれる。「時が迫っている。」、とNATO事務総長シュトルテンベアクは述べた。この戦争は交渉をもってして集結せしめる。そのためには戦局を優位に持っていくことが必須である、とシュトルテンベアクは考える。だがそれらの思いとは対極に、ショルツは主力戦車供給を一貫して拒否する。

ショルツが頑なに戦車供給へと動かない理由は?

「供給するもしないもそれぞれに正当な理由があります。」、このように述べるショルツの腹心である新防衛大臣は、ショルツが決断さえすればすぐに実行に移せると考える。前任のクリスティーネ・ランブレヒトが公に避けてきた課題。

その理由はショルツが戦車供給を実行する気配が皆無であったからなのか?もしくは彼女に先見の明が欠けていたのか?だがこの教養の欠如はそれほど致命的なものではない:開戦後11ヶ月の時点で連邦政府は可能な戦車供給数についてすら把握していなかった。ショルツの躊躇はおそらく連邦軍部の状態に影響されてのものであった可能性もある。

プーチンにとどめを刺すことを躊躇するショルツ

だが何よりもショルツはNATO分断の絵面は避けようとするが、すでに遅かった。アメリカを何としても味方に引き入れようと画策する。エイブラムス型戦車はその複雑な仕組みと燃料消費量は多いことからウクライナ戦線には適していない。これが米国が供給を断念した理由であれば合点がいく。

ドイツが躊躇している間にも、他国はずっと前から戦車供給を決定していた。欧州諸国で出動待機している戦車は、ドイツ製のレオパルド型であるため、ドイツが投入を決断しなければ動くことができない。このレオパルド型戦車が戦局を大きく変えると考察する専門家もいる。

 

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