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軍事専門家がウクライナ支援を否定?:「14両のレオパルド戦車提供はいわば政治的披露です」

2月17日から20日にかけてミュンヘンは国際安全保障会合の舞台となった。EUの議員、国家元首、外交官らが一同に集結した。この会合がウクライナ戦争にもたらすものとは何か?軍事専門家のジュンケ・ナイツェルが解説する。

ミュンヘンでの国際安全保障会合が開催される前からすでに主題は明確であった。:ミュンヘンの中心に位置する高級ホテルでの会合はウクライナ戦争の影に覆われていた。政治披露以上のものは何も期待できないと、ポツダム大学の軍事専門家のジュンケ・ナイツェルは語る。

ジュンケ・ナイツェル:もちろんこの会合で何か我々が抱えている問題が解決されることはありません。にも関わらず、アメリカへのシグナルとして大きな役割を担っているのも確かです。当然西側の代表らが集結するのは前向きな意味合いを持っています。中期的に見ればそれは言葉にとどまらず、実行に移されるでしょう。

 

具体的な行動は期待できるでしょうか?

ナイツェル:いいえ、私は期待していません。何か新たに実行されるとしたら、それは実に驚くべきことです。宣言通りにレオパルド戦車の共同提供が順調に進むことが難しいことは明らかです。

この戦争ではやはり時間との戦いになるでしょう。NATO書記長シュトルテンベアクはそこをうまく表現しています。:補給速度の戦いになるでしょう。どちらの方が早く武器、弾薬類を供給できるでしょうか?西側のウクライナへの供給、それともロシアでしょうか?

アメリカからの追加支援はあるのでしょうか?

ナイツェル:米国報道官ハリスと国務長官ブリンケンがそれについて直接言及することは考えられません。米国内でもその可能性はないでしょう。米国でも空からの支援は期待できないでしょうし、英国は供給する武器に例外はないと大々的に宣言はしたものの、こちらも戦闘機を提供する意思は示していません。

水面下で追加支援が進められる可能性はありますか?

ナイツェル:私が思うに、いくつかは水面下で進められることもあったでしょう。これは安全保障会議とは無関係です。それからとりわけ追加支援の必要性を訴えるシグナルを送ることも試みられたでしょう。

こんな安っぽい発言が一体この会議で何をもたらすのでしょうか?

ナイツェル:ウクライナ支援の大きな決定は水面下で行われています。しかしレオパルド戦車提供議論でのショルツの躊躇いようを見るに、そうとは言い切れませんね。:これはヨーロッパにはあまり良い印象を与えません。やはり披露するための議論は重要になります。

他にも何か事例はありますか?

大きな影響を与えたものとして、連邦首相オラフ・ショルツが昨年放った発言が挙げられます。核戦争の危機を回避するという名目でウクライナ戦争には関与しないと発言しました。

ドイツ国内でこれらを議論すると、いささか感情的になる傾向があります。首相が戦争に巻き込まれてしまうと煽ると、恐怖が湧き上がります。一方でショルツの歴史の転換点における演説が多くの支援を正当化しました。

彼は何を決断できますか?ショルツはこれまで全ての決断をその手の内にしまっていました。

ナイツェル:ピストリウスはすでに支援義務または防衛予算の増額を議題に挙げています。そして、武器の調達等における優先順位の設定を国防省内の立ち位置と過程から決断していると、私は確信しています。

あなたは先ほど、両国の補給競争について話しました。ウクライナはロシアの春の大攻勢に耐えられるでしょうか?

ナイツェル:3月からウクライナに提供される予定となっている戦車は非常に扱いやすくなっています。ドイツは現在14両のレオパルド戦車を提供しています。これは政治披露としては物足りないです。しかしヨーロッパ側がレオパルド2個大隊、数にして90両、を集めたとしても戦況は好転しないでしょう。

もちろんこれはウクライナがどのように運用するかにもよりますが。戦略的に有効に利用することができれば、東部戦線で大きな戦果を上げることは可能でしょうが、大局に大きな影響を与えることはないでしょう。

ロシアの春の大攻勢が前倒しされる見込みとなっています。これに関してはどう予測しますか?

ナイツェル:ロシアが数で押し切ることになるでしょう。ウクライナに巨大な波となって押し寄せます。ですが本当のところ戦局を左右するのはやはり部隊の配置です。まだ切り札があります。これまでの戦略は第二次世界大戦よりも第一次のそれを彷彿とさせます。

注目すべき点はどこでしょうか?

ナイツェル:ロシア人は大衆と大砲に依存しており、損失は気にしていません。そして彼らの兵科間の連携は機能していません。もちろん:量は質となります。ロシアの大攻勢は予想よりも戦果を挙げ、西側にさらなる戦車の提供を行うよう圧力をかけることになるでしょう。

本当のところのジレンマは:ヨーロッパは計2300両のレオパルドA4の供給を可能としています。当然それら全てが良好な状態ではなく、中長期的に各国に負担となるのは確かです。いずれにせよこの戦車論争は単純なものではありません。

さらなる提供はあるでしょうか?

ナイツェル:追加提供への政治的圧力は高まると考えます。9月のウクライナの大攻勢に幻想を抱いた人は少なくないでしょう。ですが戦争はまだ終わっていません。ゼレンスキーの演説は誇張されています。ウクライナの勝利条件は、クリミアへの陸橋の奪還です。現時点でそれが現実的であるかどうかは疑問が残ります。

今年の安全保障会議でも行方不明者が1人います。:2022年の時点ですでにロシア外相セルゲイ・ラブロフ安全保障会議を欠席しています。今年に関してはそもそも招かれてすらいません。これがさらに事態を悪化させうる要因になるでしょうか?

ナイツェル:いいえ、ロシアはすでに対話を放棄しています。和平交渉の意思がある場合のみ、ロシア代表団を招待することは理にかなっています。

 

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